
大人気ドラマ「ガリレオ」!
今回は映画化も決定した傑作「沈黙のパレード 」の原作を読んだ感想、詳細、見どころをご紹介します!
「 沈黙のパレード 」作品紹介
舞台は東京の小さな町。
「なみきや」という小さな料理店の長女がある日失踪し、なぜか3年後静岡県の全く知らないゴミ屋敷で遺体として発見されました。
容疑者として浮かび上がったのは、23年前にある少女の殺害事件の犯人として逮捕され、証拠不十分で無罪となった男。
容疑者の男は、またも証拠不十分として釈放されてしまう。
しかし町のパレード当日、男は殺害された。
女性を愛する人々のが織りなす「沈黙」の連鎖。天才物理学者・湯川学が、複雑に絡み合った事件に挑んでいく!
「 沈黙のパレード 」ネタバレ・詳細
東京の片田舎、「菊野市」。
そこに常連客で賑わう「なみきや」という料理屋がありました。
実は3年前、なみきやの長女が失踪。懸命に捜索するも手がかりのないまま時間が過ぎ、なみきやの夫婦、そして次女は長女がもうこの世にはいないだろうと気持ちの整理がつき始めていたのです。
そんなある日、全く意図しない場所から長女の遺体が発見されます。
それは静岡県のあるゴミ屋敷。長女は老母の遺体と共に白骨化して発見されました。なぜ縁もゆかりもない場所に、長女の遺体があったのか誰も見当がつきません。
この事件に呼ばれたのは、警視庁捜査一課、係長の草薙。呼び出したのは間宮管理官。なぜ静岡の事件に警視庁の捜査一課が呼ばれたのでしょう。
実はこの事件の発見場所であるゴミ屋敷は、ある男の継母の母の家だったのです。
その男とは23年前、ある12歳の少女を殺害した容疑で逮捕された「蓮沼」。
その少女の事件を担当したのは、若き日の間宮と草薙。間宮と草薙は徹底した捜査の中で、なんとか「状況証拠」を集め、決定的な証拠と蓮沼の自白は得られないもののなんとか逮捕し、起訴まで持っていきました。
しかし裁判の結果は「無罪」。
状況証拠は限りなく蓮沼を犯人と想定させるものではあるものの、「絶対に犯人である」ことを証明することはできなかったのです。
そして容疑者の蓮沼は、徹底的に「黙秘」を貫きました。
少女の母親は、自分が目を離したから事件に巻き込まれたのだと心を病み、自殺。
間宮、草薙は自分たちの力不足をずっと悔いていました。
そして23年後、また自分たちの前に容疑者として現れた蓮沼。
次は絶対に罪を償わせると強く想うのでした。
しかし今回の事件でも蓮沼は、頑なに黙秘を貫きます。状況証拠を集め、なんとか逮捕まで漕ぎ着けた草薙たちですが、今回は起訴すらできず釈放。
草薙は遺族に対して、またしても何もできない自分を責めるのでした。
この「蓮沼」という男。警察の徹底的な取り調べでも「黙秘」を貫くんですよね。もう読んでいてイライラしちゃいます!
実は自白というのは裁判でかなり重要な証拠となるんですね。限りなく黒でも、絶対黒ではないなら無罪になるという、冤罪を防ぐための司法の仕組みが草薙たちに立ちはだかります。
t草薙の親友、天才物理学者の湯川学は、アメリカから帰国し教授となっていました。
湯川から帰国のメールをもらっていた草薙の部下、美人女性刑事・内海薫。
草薙に湯川からのメールと、実は湯川の今の実験施設が事件の舞台、菊野市にあると報告します。
草薙は久しぶりに親友に連絡し、23年前の事件、そして3年前の事件ともに「蓮沼」という男を起訴できなかったことを嘆くのでした。
ガリレオ先生、久しぶりの登場です!
内海にだけ帰国したことを報告するのも、内海が聞かれなかったから草薙に伝えていないのも、このサバサバした関係が結構癖になります!
湯川は「なみきや」に定期的に通い、常連客たちからも「教授」として慕われるようになっていました。
そしてある日、菊野市の名物パレードの存在を聞き、次女の夏美に案内してもらうことになったのです。
そんな日々の中、どうにか長女の事件を受け入れなくてはと思っていたみんなの前にいきなり店に現れた蓮沼。
そして蓮沼は、警察に蓮沼が不利になるような証言をしたと関係者を責め、金銭を要求しようとしたのでした。
この蓮沼の太々しい態度!さらに金銭要求!
実は今回の被害者、長女の佐織をいかがわしい目で見たりしていたので、店を出禁にされてい蓮沼。
無罪放免となって、嫌味を言いに店までやってきて、損賠賠償させようだなんて本当に悪人そのもの!
どうして無罪になってしまうの!?と思いますが、人を裁くことは慎重にしなくてはならないのも事実。
悔しいけれど、「疑わしきは罰せず」なんですよね。
佐織の家族・なみきやの人々と、なみきやを愛する常連客たちはある計画を立てます。
実行されるのはパレード当日。
計画を知る人、真実を知る人、何も知らない人、たくさんの人たちがパレード中にそれぞれの役割をこなしていくのでした。
湯川はパレードを見たいとなみきやの次女、夏美に相談し、一緒に見学することになります。
そしてパレード終了後、なみきやにはパレードの実行委員たちが打ち上げに集まっていました。
そこで知らされたのは、あの「蓮沼」が亡くなったという事実。
驚く人々。
草薙たちは蓮沼を憎み、佐織を愛した人々を徹底的に調査しますが、誰しもがしっかりしたアリバイを持っているのでした。
正直、蓮沼の死に同情する人は少ないなと感じてしまうほど、蓮沼という男の行動は嫌な気持ちにさせられることばかりです。
法の基の平等というのは、頭では理解しているのですが、こうして描かれると自分の置かれる立場によって考えさせられますよね。
特に蓮沼のように「善」の心が欠落している人間にとっては、黙秘権という権利はとても有利になってしまうのでしょう。
一般的な人間なら、罪悪感からずっと沈黙を続けることなんて無理ですが、世の中には罪悪感を感じない人間もいるのは間違いありません。
状況証拠から見て、99%犯人でも自白もなく、「決定的な証拠」が出ない限り、無罪、または起訴さえされないという状況に被害者遺族たちはずっと苦しむんですよね。
湯川はこの事件を考えたとき、草薙たちには見えなかったある繋がりを感じます。
ここからが東野圭吾作品の真骨頂です!
書籍派も映画派も、最初から隅々まで考えて読んで、観ていましたか?
東野圭吾作品は、全てに意味があるんです!無意味な人物、無意味な行動は一切存在しないんですよね。
ここからは蓮沼を憎む普通の人々の考えたトリック、そして思わぬ誤算、また奇妙な繋がりなど「騙されながら」ぜひご覧いただきたいです!
「 沈黙のパレード 」見どころ
「 沈黙のパレード 」見どころは
- 23年前の少女殺害事件の真相
- 3年前の並木佐織殺害、死体遺棄の真相
- 佐織を取り巻く人々
- 蓮沼殺しのトリック
- 沈黙は罪なのか
個人的には物語とはあまり関係がないのですが
- なぜ湯川はアメリカから帰国したことを内海にだけ報告したのだろう
という偏屈な物理学者と気の強い女性刑事の関係もちょっと気になっています。
また、容疑者Xの献身で湯川が真実だけを追い求めたことにより石神が本当に幸せだったのか未だに悩んでいる描写もありました。
「 沈黙のパレード 」感想
私が読んだ「 沈黙のパレード 」感想としては、「容疑者Xの献身」よりは感動は少なかったですね。
「容疑者Xの献身」の石神の想いは、考えれば考えるほど純愛、人を愛すること、自分が愛する人が幸せになってくれたら自分はどうなっても良いと心の底から願っていることを考えると、まだ「容疑者Xの献身」を超える名作はないですね。
しかし「 沈黙のパレード 」の「沈黙は犯罪なのか、悪なのか」という疑問と、現在の司法の限界、しかし必ず犯罪を犯したものだけが悪いのかという葛藤など、犯罪は感情で裁かれてはいけないと改めて考えさせられました。
また「親友」というキーワードも大切なってくるのですが、湯川が草薙を親友だと認め、親友の過去の後悔のために動く姿は友情を感じられて良かったです!